ゲスト:堀部篤史さん(「恵文社一乗寺店」店長)

雑貨店とアートギャラリーが併設された京都の本屋、恵文社一乗寺店。店内の本棚やテーブルは、それぞれの本のジャンル、アイテムごとに詳しい知識をもったスタッフがしっかりマネジメントしています。全てのスタッフをまとめる店長の堀部さんに、ご自身が求める本屋のイメージを語っていただきました。

********************************************************************


※堀部さんが自ら担当する、恵文社一乗寺店の洋書↑と音楽↓のコーナー。



※↑レイモンド・ペティボンの作品集とソニック・ユースのCD。

レイモンド・ペティボンにマイク・ケリー、ゲルハルト・リヒターやマーク・ボスウィック。サガンが文章を添えたウィンゲイト・ペインの写真集”Mirrors of Venus”、マイク・ミルズがデザインしたX-girlのポスターなどなど。これら全ての今でも大好きなアーティストやモノたちを僕はニューヨークのバンド、ソニック・ユースから教わりました。彼らがジャケットに使ったり、Tシャツにしたアーティストばかりなのです。

今から約20年前にリリースされたスタイル・カウンシルのアルバム、”our favorite shop”のジャケット写真は、ジャズのレコードや映画のポスター、モッドなファッションなどなどメンバーであるポール・ウェラーとミック・タルボットが偏愛するアイテムばかりが揃った架空のお店、というシチュエーションでした。そこからジャズやソウル・ミュージックに触れた方もきっと多いでしょう。

理想の本屋は?と訊かれたとすれば、グラスゴーの片田舎にあるレコードと本のお店”John Smith Book Shop”と答えます。行ったこともないのに。ずっと大好きなバンド、パステルズのスティーブン・パステルが働いていたお店で、こじんまりとしながらといても行き届いたセレクトが魅力的なお店だったようです。残念ながら今はもうありません。

前置きが長くなってしまいました。こんなふうに僕は今まで音楽を聞いてアートやデザインに触れたり、小説を読み映画を見ることによってたくさんの音楽やファッションのことを知りました。興味や知識がそこから広がる過程が好きで、ひとつの物事にずっと夢中になることはあまりないようです。お店だってそこへいけば専門商品が何でも手に入るメガストアではなく、そこにしかないもの、その店の個性が感じられるセレクトを見てみたい。

たまたま僕は音楽を演奏、作曲する事も、小説を書く事も出来なかったので、その面白さを店という形の中で表現したかったのかもしれません。資料として本や音楽を扱うのではなく、そこから生まれる知的好奇心の広がりを形として提示したい。これはエデュケーションではなく楽しみの共有であり、「このかっこいいレコードのジャケットが誰の作品だか気になりませんか?」といった程度の語りかけでもあるのです。




( text:2005年8月18日 )


*堀部篤史 (ほりべ あつし)
1977年生まれ、京都出身。セレクトに定評があり全国からファンが訪れる京都市左京区の本屋「恵文社一乗寺店」の店長。店のすべての一般書を管理する仕事に加えて、海外での買い付け、時には併設ギャラリーの特別展の企画もこなす。来月は本の買い付けでパリへ、と超多忙な日々。10月には平凡社より一部参加したレクチャーブック「本屋さんのお仕事」を、2006年にオルネ・ド・フォイユより雑文集を出版予定。

< Back