ゲスト:林みきさん(雑誌「spoon.」編集者)

市川実日子ちゃん、高橋マリ子ちゃん、太田莉菜ちゃんなど人気モデルは必ずこの雑誌で活躍していること、皆さんもご存じだと思います。イラスト、雑貨、洋服、音楽、女の子の好きなものをまるごと詰め込んだ、宝箱のような雑誌『spoon.』。林みきさんは『spoon.』を立ち上げたひとです。

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※↑ここ最近のspoon.たち。「何の雑誌ですか?と質問されたときに答えるのに自分でも困ってしまうくらいに、色々なジャンルを特集しています。」


※↑spoon.以外で林さんが担当したお仕事でお気に入りのもの。カルピスのキャンペーン用小冊子と絵本(絵・たんじあきこ)。そして初めて担当した単行本100%ORANGEコミック集『フルーツの部屋』。


今年の8月で、自分が創刊からたずさわった『spoon.』という雑誌が5周年を迎えました。spoon.だけで32号、この他にも自分が担当したカタログやフリーペーパーや書籍もあるので、決して少なくはない数の“モノ”を作ってきたことにようやく気がつきました。

一度足を踏み入れてしまったら最後、真っ当な人生へと戻れなくなる“編集ケモノ道”。この道に自分が入ったきっかけは、現spoon.編集長が以前に編集長をつとめていた雑誌『H』との出会い。必要以上に着飾ることを悪と考える両親に育てられたため、『オリーブ』以外のファッション/カルチャー誌を読んだことがなかった自分にとって、それはもう衝撃でした。そして誌面の中にひとつの世界を作り上げる、という行為に憧れを抱くようになり、たまたま掲載されていた正社員募集に冗談で応募したのをきっかけに、社外バイトをすることに。それから紆余曲折を経て5年後、spoon.を創刊するから手伝わないかと編集長に声をかけられ、その頃勤めていた某プロバイダーを即退社し、幸か不幸か“編集ケモノ道”を歩むことに。

業務のほとんどはspoon.の編集ですが、我が社はいわば万屋なので、時と場合によっては雑誌以外のモノを制作することも。また雑誌の中でも誰が何を担当するか(ex.映画、ファッション、雑貨など)は特に決めておらず、興味がある人/その分野が得意な人が担当するという形式をとっています。なので社外の方に「何を担当されているのですか?」と訊かれると「何でも」としか答えようがない、まさに万屋。また今でこそ編集スタッフが5人に増えましたが、一時期は編集長と自分しかいない時期もあり、この頃は今以上に“万屋”でした。そんなこともあり、あらゆるジャンルの情報収集は時間が許す限り行うようにはしています。今はインターネットという便利なものもあるので、情報収集の面では昔よりはるかに楽になったのではないかと思います。時間的制約などにより“広く、浅く”なりがちな情報を、どう“広く、深く”していくかが、今の自分の課題です。


※↑もう4年近く使っているという愛用のデジカメ。時には自分で掲載用写真を撮影することも。

絵本、ファッション、海外カルチャー、雑貨、映画、などなど、色々な特集をspoon.で組んできましたが、その内容を決めるのは「その時のノリ」といっても過言ではないでしょう。創刊号の特集を決めるときも編集長に「今、何に興味がある?」と聞かれ、即座に「絵本と子供」と答えたら、本当に創刊特集になりましたし……。さすがに創刊5年目となると、どういう特集だと従来の読者が喜ぶか、そしてどういうものだとspoon.を知らない人でも興味を持って手にとってくれるか、などを考えるようになりました。しかし「その時の好奇心を大切にする」という部分は、今も変わっていないと思います。

“編集ケモノ道”に足を踏み入れてからは、主観(というか勘?)を大切にしつつも、客観も大切にするようになった、と自分では思っていますが、昔から自分を知っている人には「そんなことないぞ!」と言われます。でも自分が好きでも誌面になったときに反響がそんなにないと思われるもの、あまり共感を得られそうではないもの、アバンギャルドすぎるものは涙を飲んで掲載を我慢しています。“いつか自分のメディアを持ってやる!”という野望を抱きながら……。


※↑印刷立ち会いで訪れた、印刷所の校正室にて。


( text:2005年11月10日 )


*林みき(はやし みき)
1977年生まれ。某IT企業に勤めるも、雑誌『spoon.』(プレビジョン刊)立ち上げ時に編集長から直々に抜擢され、編集者に 転身。幼少時代の大半はアメリカで過ごしたバイリンガル。「“異文化”の意味合いさえ理解できない頃から外国文化に触れながら育ってしまったがために、 日本に帰国した直後アイデンティティー・クライシスを起こしかけた。」とは言うものの、今ある『spoon.』で海外特集が充実しているのは林さんの力量によるところが大きい。現在は個人名義でコピーライターとして広告・カタログなどの仕事も請け負っている(窓口はこちら)。好きな動物はシロクマ。松本弦人氏から譲り受けた愛犬・ダルメシアンのピーポ、同居人と共に東京在住。

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