ゲスト:金玖美さん(フォトグラファー)

同じロンドン在住の金さんと会うたび、私は「このひとの目に映る日常は、どんな構図に切りとられているんだろう?」と考えてしまいます。わずかな光の角度、色の濃淡、風の向き…そうしたことをやはり繊細に分析しながら、いつも風景の上にフレームを重ねているのだろうか、と。金玖美さんは、そんな好奇心がわく作品を撮る女性です。

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↑デザイナー山懸良和とのコラボレーション作品

写真を撮ることを始めて10数年、仕事にして10年近くを迎えます。技術的なものは広告写真家のもとでアシスタントをして学び、出版社での専属を経て、独立とともにロンドンに渡って2年ほどになります。

写真をはじめた頃は、カメラの四角のフレームのなかに好きなものを収める、思った通りに切り取る、可愛く見せる等、表面的なことばかりにこだわっていました。でも、撮り続けていくうちに気づいたのは、写真は目に見えているものだけを写すものではないということ。自分や被写体の思い、フレームの外にも続く世界、そこに込められたメッセージやストーリーなど、「写真の背景にあるもの」を見ている人に感じてもらえるような写真を撮りたい、と思うようになりました。なかなか難しいことですが…。
 


↑前に住んでいた家の屋上から。小さく、ユニオンジャックの傘が。


↑ポーランドの雑誌『EXCLUSIVE』に掲載された作品の一枚。トラファルガー・スクエアにて撮影。

職業としての写真はチームワークが重要で、クライアントやスタッフとの合意や意見交換によって成り立ちます。撮影目的や必要とされているものがはっきりしているため、ある意味作りやすいですが自分で企画を考えたりテーマを決めたりする、個人的な作品をつくることこそフォトグラファーにとって大切なことだなあと思います。こういったことの積み重ねが、仕事に戻った時にとても生かされる気がしています。

ロンドンを始め欧米の雑誌では持ち込み作品を受け入れているところが多く、こちらでテーマやストーリーを考えて撮影をし、編集部に一方的に送ります。編集者に気に入ってもらえれば、だいたい6〜10ページというまとまった形で作品が掲載されます。毎回が自由課題のコンペのようで、やりがいがありますが、お金は全くもらえません! あくまでも自分の作品を発展させるための場といえます。日本の雑誌の作り方とはここが大きく違いますね。

続ければ続けるほど深みにはまる職業です。楽しく、険しい道のりです。そして、奇をてらうことはせずに自分が見たことのない写真を撮りたいと、私はとみに思います。


↑スタジオは、ロンドンのデザイナーSWASHとグラフィック・デザイナー2人と共有している。




( text:2006年7月7日 )

*金玖美/KOOMI KIM(きん くみ)
1972年生まれ。大学在学中からカメラを始め、雑誌『Olive』で写真を撮ることに憧れてマガジンハウスに入社。結局『Olive』に配属されることはなかったがマガジンハウス専属カメラマンとして『an・an』等で活躍する。2004年退社と同時にフリーランスになり渡英。最近手がけた雑誌はオーストラリアの『OYSTER MAGAZINE』、イギリスの『 FLUX』等でのファッション撮影。日本では、Rie fu 映画『ハイジ』主題歌のCDジャケット、雑誌『FIGAROjapon・voyage』など。ウェブサイトでは過去に撮影した作品の一部を閲覧することができる。かなりの旅好きで美味しいもの情報にも詳しい。「夏のロンドンは日が長く、遊びほうけて、寝不足気味です。」

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