ここ数年、小柳さんは積極的に知育玩具の魅力をつたえる本を出版したり、雑誌に記事を書いたり、イベントを開催したりされています。これまで多くの玩具を目にしてきた小柳さんが、お気に入りのアイテムについて寄稿してくださいました。
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ライターの小柳帝と申します。
仕事で海外に出る機会が多いんですが、今日は、今年(2006年)の5月、雑誌「Pooka」の取材でスイスに行ったときのことを書こうと思います。とはいえ、その詳細は、すでに「Pooka」15号でご覧頂けますので、今回はそのこぼれ話をご紹介します。

↑ネフのスイス・スーベニア・シリーズ

↑左が、小柳さん著の『EDU-TOY』。右は、ネフさんの本。
今年スイスに行ったのは、ネフさんが80歳になられたのを記念して開かれた展覧会を観に行くためでした。ネフさんというのは、私の知育玩具本『EDU-TOY』の中でメインに紹介しているネフ社の創業者。数々の木製知育玩具の傑作を生み出してきたネフ社の顔というべき方です。言ってしまえば、ボクが玩具の世界でもっともリスペクトしている人。そんな偉大な業績を残してこられたネフさんの本が、今まで一度も作られたことがないなんて知らなかった。その展覧会というのは、『Kurt Naef - Der Spielzeugmacher』という、ネフさんについてはじめて書かれた本の出版を記念して開催されたものだったのです。

↑スコラーリさんデザインのスイスカー

↑こっちはクルリ(カーリング)
ボクがそもそもネフに興味を持ったのは、ペア・クラーセンさんがデザインした「キュービックス」のような、ネフを代表する積み木の傑作ではなく、ペーター・シュバイツァー・スコラーリさんデザインの「サッカー人形」のような、あのキュートな顔の男の子のシリーズでした。このシリーズには、乗り物もいろいろあって楽しいんですが、何とカーリング人形まであるんですよ。こういうものまで出しちゃうところが、ネフっぽいんですよね。ボクの好きなものには一貫して、どこかにこうした「ユーモア」があるような気がします。

↑アオイさんデザインのモティボ

↑小柳さん著の、『グラフィックデザイナーのブックデザイン』
やはりボクが大好きなネフの知育玩具の一つに、「モティボ」という絵合わせの積み木があります。それをデザインしたのが、アオイ・フーバーさん。あの日本のグラフィックデザイナーの草分け、故・河野鷹思さんのお嬢さんです。アオイさんは、スイス出身にしてイタリアで活躍された世界的に有名なデザイナー、故・マックス・フーバーさんと結婚し、そのまま今もスイスで暮らされています。そのマックス・フーバーさんの美術館「マックス・ムセオ」が、昨年の秋、イタリア国境に近いキアッソという町にオープンしました。もちろん、そこを運営管理されているのはアオイさん。ボクは、『グラフィックデザイナーのブックデザイン』という今年出した本の中で、アオイさんが作られた絵本を紹介しているのですが、その際に、一時帰国されていたアオイさんにはじめてお会いし、そのときアオイさんから、「マックス・ムセオ」にぜひいらっしゃいとお誘い頂いていたのでした。

↑左が、そのアオイさんの絵本。右は、アオイさんの作品集。
その夜、アオイさんを囲んでの会食の席で、スイスの絵本作家といえば、あなたはラヴァターさんを知っている?という話になったので、アコーデオン・ブックのウォーリャ・ホネガー・ラヴァターさんのことですか、と訊ねると、そう、彼女はまだご健在だと思いますよ、と。「Pooka」にも書いたが、ボクはそのウォーリャさんの、誰もが知っているお話を抽象的に描いた、絵巻物のようなアコーデオンブックが大好きなのだ。ところが、その翌日、チューリッヒで訪ねた、ホンマタカシさんの写真集なども出している、ニエヴェスという今をときめくインディープレスのべンヤミンくんも、最近、スイス出身のこの作家の絵をギャラリーで見て興奮したんだ、と言って見せてくれたのが、何とそのウォーリャさんの作品。ボクが、ウォーリャさんの本ならいろいろ集めてるよ、と言うと、今度日本に行くからぜひ見たい、という話になったので、これは後日談ですが、先日ニエヴェス展のために来日したベンヤミンくんに(この記事は、「Casa BRUTUS」2007年1月号に載せました)を、そのウォーリャさんの本をお見せした次第。何だか不思議ですよね、日本人であるこのボクが、スイスのアーティストのことを、スイス人に紹介しているなんて。それどころか、こうしてお話してきただけでも、国境や世代を越えて、人と人とがこんなにもどこかで繋がっているんだということに、今さらながら気付かされるのです。きっとボクは、そういうことが好きでこの仕事をやっているんでしょうね。これも後日談ですが、この夏、いよいよマックス・フーバーさんのまとまった作品集がファイドンから出て、それを記念して、9月に「河野鷹思+マックス・フーバー展」が開催されました。そして、それをボクが紹介した「Casa BRUTUS」の記事を見て、以前、「Olive」や「relax」でお世話になった編集者のSさんが…(この話は、さらに続いていくのです。この続きは、またいつかどこかで!)
この場をお借りして、去る11月30日におなくなりになったクルト・ネフさんのご冥福を、謹んでお祈りしたいと思います。
( text:2006年12月7日 )

*小柳帝(こやなぎ みかど)
1963年生まれ。(帝さんのお名前はおじいさまの命名による本名。)東京在住。ライター、編集者、翻訳者、フランス語教室ROVA主宰など多数の顔をもつ。これまでの著書に『モンド・ミュージック』、『EDU-TOY』、『グラフィックデザイナーのブックデザイン』、翻訳書に『ぼくの伯父さんの休暇』、監修書に『あたらしい教科書1<雑貨>』などがある。映画のパンフレット、CDライナー等の執筆多数。現在、映画、音楽、デザイン、知育玩具等の分野を中心に、『Casa BRUTUS』、『BRUTUS』、『ku:nel』、『SPUR』、『VOGUE』、『GQ』、『FIGARO』、『spoon.』等に寄稿している。小柳さんが取材した現在発売中の『Pooka』Vol.15の特集「そうだ! スイスへ行こう!」はtinycrownの当コラムとあわせてぜひご一読を。2007年の2月〜3月には福岡市のアルティアム(イムズ内)というギャラリーで、小柳さん監修の『EDU-TOY』展も開催される。また、その頃『グラフィックデザイナーのブックデザイン』の第2弾も刊行予定。さらに、『黄金の七人』CD BOXを皮切りに、小柳さんの監修で、イタリアのサントラ盤のリイッシューが、2007年から怒濤のようにスタートするとか。
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