minä perhonenがヨーロッパに上陸して数年がたちました。ロンドンで生活していると、イギリスの雑誌でも時おりminä perhonenの記事を目にします。
そんなとき思い出すのは、昔、出張で京都に来られた皆川さんを、当時、京都に住んでいた私がお寺に案内したときのこと。夏の苔むした境内を歩いていると、急に皆川さんは苔に手をのばして感触を確かめると、ふむふむ、という表情に。それは、何だかとても印象的で、ファブリックに触れるときの皆川さんをどこか連想させました。
今回は、minä perhonenのファブリックの、とくにテクスチャーのお話です。
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tinycrown(以下T):minä perhonenは、ファブリックの肌触りというか、テクスチャーにもずっと強いこだわりがあるように思いますが、皆川さんは、洋服を作りはじめる前からテクスチャーに興味があって、物を見るとき表面の質感に自然と目がいったりということは多かったんですか?
皆川明(以下M):子どもの頃から、歩きながら壁や鉄の柵を触ったりするのが癖で。今は洋服を作るときも「肌触り」と「弾力」をとても意識していて。例えばカシミアをリネン(麻)と一緒に織るとするでしょう? 表面はカシミアのようにやわらかいんだけど、リネンが入ると弾力が加わる。見た目はカシミアの風合いだし、触ったときはなめらかなんだけど、フォルムとしてはすこし張りが出る。ものの「触る」と「にぎる」の違いはよく気にします。

T:テクスチャーの決定は、洋服のデザインのあとになるのですか? このデザインには、この質感でいきましょう、というふうに。
M:大抵そうです。
T:それは職人さんのところへ行って、どんな素材をどんな割合で混ぜて織るのがいいか、アドバイスをもらいながら、細かく調整していくんでしょうか。例えば、リネンひとつとっても沢山の種類がありますよね。
M:テクスチャーのイメージはレシピみたいな感じで大体頭の中で想像できるから、こちらで指示して、直接工場へであったり、間に入る人にも「こういう表情を作りたいんだけど、それには表面がカシミアで裏糸にリネンの何番手くらいを使ってください。」とか、「少し縒(よ)りを甘く」、あるいは「縒りをきつく」とか。織りあわせたらこんな風合いになりますかね、っていう自分の想像を一回ぶつけて、こうじゃないですか、ああじゃないですか、という話を聞きながら、じゃあその何通りかを試しましょう、という感じ。
T:そして複数のサンプルがあがってきて、実際に触ってみて、最終的にこれでいこう、と絞るわけですね。
M:そう。それと、出来上がったファブリックの風合いを見て、もう一回洗って使いましょう、とか。そのほかに、コーティングじゃないんだけど張りをもたせる加工もあって、それにしよう、とか。でも苔もそうだけど、見た目すっごく湿度を含んでいるような気がして、でも触ると意外とぺちゃぺちゃしていないというか、ぱりっと乾燥もしているし硬さがあるっていうか。押し返してくるような力。「意外性」が面白いと思う。
T:そういえば、minä perhonenのお洋服にも「意外性」が仕掛けられたアイテムがたくさんありますよね。テクスチャーに限らず。織りのずれをわざと味として採用している柄のスカートや、永く着ているうちに、すり切れると下に隠されていた色が少しずつ現れるようにしてあるジーンズとか。ところで、皆川さんがとりわけ好きな質感というのはあるのですか?
M:それ(好み)はね、変わっていく。でも、変わっていくけど、どちらかだけになるっていうことはない。ボリュームがあって張りのあるコートの下に、柔らかいブラウスを着せたり。そういう、一着だけっていうよりは、全体の着方として、こういう組み合わせがいいかなあとか。
T:素材では何かありますか。
M:基本的には天然のものが好きだけど、リネンだったら今好きなのは… 専門的になってしまうけど、60番手っていう細すぎないリネンで、できるだけ高密度でびっちり織る感じ。ぎゅっと締まった感じになるんだけど、それが好き。
T:それは、使っていくとどういう風合いになるんですか?
M:昔のヴィンテージのリネンのクロスみたいな感じかな。
T:じゃあ、ちょっと厚めで、アイロンをかけるとびしっと硬く張りがでるような。
M:そうそう。それをあえて洗いざらしで使ったり。あとは、太いカシミアの糸が好きで、それを甘く織ったりとか。細くて縒りを強くするとカシミアらしい存在感がなくなってしまうから。糸としてはとても贅沢なものにはなるんだけど、カシミア本来の空気を含んでいる優しい感じにならないから、やわらかい太番手の糸で縒りが強くなくて、ふんわりしているほうが好きかな。シルクは、紬糸(ちゅうし)っていってちょっと節があるような野生のシルクのようなのが好きだし、コットンはインドのとっても細い番手のものがあって、縒りを強くして織ったのが好きです。

※2007年2月に開催されたパリコレのショーの風景

※ショーの会場で新作を身にまとったモデルたち
T:今年の2月に、minä perhonenの07-08年A/Wコレクションのパリコレのショーにお邪魔しましたけど、秋冬ものだったこともあって、厚みや凹凸があるふんわりしたコートなどが登場していましたね。どれも出来上がるまでに試行錯誤はされているでしょうし、物語があると思いますが、とくに今回のコレクションからここのテクスチャーを見てほしい、というのはありますか?
M:一番特徴的なのはベルベットのジャカードで、森がモチーフになっているもの。ベルベットってパイル状に織られていて、パイルの輪をカットすると毛が立って、いわゆるベルベットの肌触りになるんだけど、カットする部分とカットしない部分のコントラストで柄を作ってあるんです。それはもともと明治時代の日本の着物の技術で、やってみたいなと思ってて、工場を探してようやくできたんだけど。それはカットした後の柔らかい肌触りと、カットする前の比較的硬い肌触りで表情を出していて。あとは、今年の刺繍は、いつもコットンでしていたのをウールの糸にしています。その表情、テクスチャーを楽しんでもらいたいです。
( interviewed:2007年5月13日 )

*皆川明(みながわ あきら)
1967年生まれ。東京都出身。オリジナルのファブリックが注目を集めるファッションブランドminä perhonen代表、チーフデザイナー。1995年に「minä」としてスタートしたのち、2003年に「minä perhonen」と名称を改める。2005年からパリコレに参加、いま日本を代表するファッションデザイナーの一人。直営店は東京白金台と京都四条河原町に構える。レディース、メンズ、子ども服、クッションや家具などのインテリア用品、ファブリックを販売する。ロンドンではCouverture ほかで、まもなく07-08年A/Wコレクションの一部が購入できる。
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