ゲスト:山井孝さん(t-yamaï ファッションデザイナー)

10代のころ、神戸のセレクトショップでオリーブ色の1枚のスカートに恋をしました。ウエストには明るい黄緑色のリボンがついていて、ギャザーも切り返しもない極めてシンプルなスカートなのに、すごく可愛い。タグの「 t-yamaï paris」の文字に、ヤマイさんというひとがパリにいるところを思わず想像した私でしたが、あれから13年、そのスカートはまだ現役です。そして、私はようやく「ヤマイさん」にパリでお会いすることができました。
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※リュクサンブール公園そばの自宅兼アトリエにて仕事中の山井さん。

tinycrown(以下T):今日はどうぞよろしくお願いします。

山井孝(以下Y):こちらこそよろしくお願いします。(イセキのトップスを見て)あ、懐かしいのを着てますね。

T:このオリーブ色のスカートはもっと前のです。

Y:うわっ。それは、初めてパリで店を出したときに置いていたものですよ。

T:確か96年だったと思うんですけど、同級生に連れられてたまたま入った神戸のセレクトショップで、このスカートを見つけたんです。初めて買ったt-yamaïの服です。

Y:物持ちいいなあ。そう、当時うちの直営店はまだ日本になかったんです。

T:このスカート、凄く丈夫ですよね。洗濯機で何回洗っても傷まないし、コットンだけど、アイロンをかけなくても、吊るして干しておくだけで張りが出てそのまますぐ着れるので本当に重宝しています。

Y:ありがとうございます。

T:山井さんのお洋服は、まず、色がとてもフランス的というか、こういうオリーブ色のスカートや深いラベンダー色のカーディガン、それから、07年の夏に購入したのですがグレーがかった水色のワンピース。色づかいが素敵だといつも思います。それでいて、デザインのディテールは日本的な繊細さがあって。こういうスタイルは、やはり渡仏されてからの山井さんカラーなんでしょうか?

Y:そうですね。フランスに住んで21、2年たちますけど、ヨーロッパでの生活で自然に目に入った色、例えば写真とか絵とかも含めて、自分の見てきたものが服作りのベースになっているんだろうなと思います。でも、とくに「フランスっぽい色」というものを意識しているわけではないんです。

T:山井さんはこれまでリバティプリントの洋服もたくさん発表されていますが、確かに、リバティはフランスではなくイギリスの布ですね。リバティを採用されていらっしゃる理由は何ですか?


※99年S/Sのコットンワンピース。優しく愛らしい印象のリバティプリントに、シャープなVネックとほんの少しだけ見えるようにあしらわれたクールな黒のトリミング。この絶妙なバランスが t-yamaïの魅力。

Y:まず布のクオリティの高さ。そしてやっぱり色がいいですよね。例えばリバティの花柄なんか、色をひとつひとつ拾っていくだけで1つのコレクションができそうなくらいです。それに、新しい柄が毎年出るだけでなく、古いものもリバイバルされる。一生ものというか、普遍的な魅力がありますね。


※09年S/Sに登場予定の、リバティフラワーのハオリシャツ。

T:なるほど。ところで、パリを拠点に服作りをされているわけですが、フランス人と日本人とのファッションにおける価値観の違いには、例えばどんなものがあると感じていらっしゃいますか?

Y:フランス人は自分に似合う色を知っていて、しかもそれに結構こだわるんですよ。「私にはこの色が似合うのよ」って言い切るし、それを譲らない。デコルテ部分を綺麗に上品に見せるのも上手だね。あと、例を挙げると「チェック=学生、子どもっぽい」という先入観があって、チェックは年配の方には好まれなかったり。そういった日本との感覚の違いはわりとありますね。

T:t-yamaïには、子ども服のライン「& Rose(アンド ローズ)」もありますが、t-yamaïのミニチュア版という感じで本当に可愛いですね。娘さんがいらっしゃるとのことで、それで& Roseをスタートされたのかな、と思っていたのですが。& Roseのコンセプトなどを教えてください。


※09年S/Sに登場予定の、リバティのノスタルジックワンピースと、& Roseのジャージートップス。

Y:娘がいるから、というのは確かにありましたね。でも、それだけでなく、以前からうちの大人服を買ってくださっている方たちから、よく「子ども服のサイズで出してもいいんじゃない?」という意見をもらっていて。仕事のパートナーでもある妻の自子も、子ども服が好きだったのもあって、作ってみようかということになったんです。僕たちの考える& Roseのイメージは、薔薇という自然の花の持つ永遠の優しさ、そのふんわりした雰囲気です。

T:ちなみに、私は& Roseがスタートしたという話を友人から教えてもらって、何年か前にパリに来たときt-yamaïのお店にお邪魔したんですが、そのときはお店に& Roseのアイテムがなくて、店員さんに聞いたら「今シーズンは作ってないのよ」って言われて。シーズンによっては、作っていらっしゃらないこともあるんですか?

Y:いや、今は毎シーズン作っています。その時は、いったんお休みして、我々もパターンなどを改良しようとしていた時期でした。

T:そうなんですね。パリ店は現在移転のためお休み中とのことですが、次はどちらにオープンされるんでしょうか。

Y:うーん、実はまだ決めてないんですよ。よい物件が見つかったら、という感じでタイミング次第ですね。

T:t-yamaïブランドのそういう自然体なところも、私はすごく好きです。よく考えたら、デザイナー自身がクリエイションのペースを決めるのは当然なのかもしれませんが… これからもご活躍を楽しみにしています。

(interviewed: 2008年10月3日)



*山井 孝(やまい たかし)
パリを拠点とするファッションブランド「 t-yamaï」「& Rose」デザイナー。文化服装学院を卒業後、BIGIに勤務。その後渡仏し、TOKIO KUMAGAIのもとでメンズを担当するが熊谷氏亡きあとチームの解散と同時に日本へ帰国、91年に再びパリへ戻りZUCCAの立ち上げに参加、95年5月にオリジナルブランド「t-yamaï」を立ち上げ、1号店をサンジェルマンにオープンした。現在、京都藤井大丸と東京代官山の直営店のほか、日本の複数のセレクトショップで取り扱いがある。

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