☆歴史的建築物に泊まる旅「The Landmark Trust」
おしゃれでモダンなデザイナーズホテルも楽しいけれど、一風変わった歴史的建築物に泊まる旅もいかがですか。
イギリスのThe Landmark Trust(以下Landmark)は、John Smith卿夫妻が1965年に創設した慈善団体で、主にイギリスの、放置され朽ちていく重要文化財級の建物を積極的にひきとり、修復やメンテナンスを重ねて宿として一般に提供しています。その数、現在約190軒。宿泊客は、建物の姿に圧倒されてはその長い歴史に想いを馳せたり、窓からの絶景を楽しんだりできるうえに、宿泊代は再び建物の維持のために使われるので、結果的にはチャリティまでできてしまうという、まったく無駄のないすばらしい仕組みです。

Landmark発行の、年刊ハンドブック今年号の表紙を飾った通称「Pineapple」。スコットランドにあります。

昨年からLandmarkに加わった「Clavell Tower」。このタワー、じつは…

こんな高台にあります。
Landmarkが所有しているのは、元図書館、教会、市庁舎、城塞、駅などといった個性のある建物。そして、1400〜1500年に建てられたものが多くあります。つまり、日本でいうと室町時代ですが、これだけ古い建物が残っているのは、地震のない国イギリスだからこそ。そして、Landmarkは装飾等の建物本来の特徴は、残す、あるいは復元するよう配慮しているため、空間に足を踏み入れた瞬間、私たちは数百年前にタイムスリップすることができるのです。

遺跡!? 名前もまんま、「The Ruin」。

その室内。
宿は、3泊から宿泊が可能で、2人から大勢まで、建物によって泊まれる人数が異なります。ウェブサイトのOur Buildingsの検索ページから、あるいはLandmarkのハンドブック付属の小冊子に、値段、収容人数、設備などの情報が建物ごとに整理されているので、それらを参考に。恋人同士から、家族、友人グループまで色々な滞在スタイルが選べますが、建物によっては、ペットを連れていっても大丈夫だったり、赤ちゃんのコットベッドを用意してくれたりとかなり融通もききます。基本的には大きい建物に大勢で泊まると、一人あたりのお値段はとてもリーズナブル。一方で、受け入れ人数2人まででも、海のそばの愛らしい小さな灯台だったりして、迷うところです。
ちなみに、水回りだけはさすがに利便性を考えて可能な限り近代的になっているのでご安心を。建物によっては、食器洗浄機や洗濯機がついているところもあります。

「Kingswear Castle」。波の迫り方が、ただの宿じゃありません…

その室内。
場所が僻地だったり、階段のステップが水平ではなかったり、という不便もひっくるめて、歴史的価値のある建物でホリデーを楽しんでほしいというのがLandmarkの方針。何もかも完備されているリゾートホテルとおなじサービスを求めてはいけません。あくまで、その風変わりな古い建物を、建物に合ったシンプルな方法で楽しむこと。これが、Landmarkを愛するひとたちの、最高の贅沢なのです。
シーズンによって、お値段は変わります。また、人気の建物は予約が数ヶ月前から埋まることもあるので心づもりを。建物の写真の閲覧と予約、ハンドブックの購入は、Landmarkのウェブサイトですべて行うことができますが、電話、FAX、メールでも対応しています。
なお、tinycrown 店主のおすすめは、まずフルカラーの写真と見取り図が掲載された£10のLandmarkの年刊ハンドブックを入手すること。家で、時間のあるときにページをぱらぱらめくりながら、へんてこな建物の写真や見取り図を見るのは至福のひとときです。(見取り図を見ると、ベッドの位置やバスタブのあるなしもわかります。)それに毎年、インパクト大の表紙写真の建物が変わるのにわくわく、新たに修復を終えた建物がページに加わっていくのが嬉しくて、つい買い続けてしまいます。(※1冊買うと、ハンドブック代£10分の宿代割引クーポンがついてくる粋な計らい。このアイデア、さすがTrustを名乗るだけあります。)
ハンドブック購入後、1年に2回郵便で送られてくるニュースレターは、修復中の建物の途中経過報告だったり、新しいサービスの案内などがまとめてあります。前々号は、2007年に亡くなったJohn Smith卿の特集で、Smith卿が古巣のNational Trustで活躍されていた頃の話から、Landmarkを立ち上げたばかりの時代、自ら土を運ぶ姿などが掲載されていて心うたれました。中でも、横たわる大木の上に乗って修復中の建物の高い塀を子どもように覗き込んでいる晩年の後ろ姿は、Smith卿の、生涯を捧げたこの仕事への愛情が感じられて、何だかじんわり涙が出ました。
イギリスは、チャリティ精神が根付いている国です。そんな文化に触れることができる、イギリスの魅力的な旅を楽しんでいただきたいです。
2009年9月18日
*ISEKI AYAKO (tinycrown)
Photo by The Landmark Trust
< Back